煙に巻きたい人と巻かれたくない人ー天野しゅにんた『philosphia』

 これは「百合作品」アドベントカレンダー1日目の記事です。

 

 「まあさんに百合漫画アドベントカレンダーやってほしい」

という友人の一言を受け、おもしろそうなのでやることにしました。

今日から25日まで毎日1つ好きな百合作品を紹介していきます。

漫画縛りは後々しんどくなってきそうなので作品に変更。

紹介というか、好きなところを好き勝手書いていきます。

10日後の25日まで10本書く予定です。

 

 なお、その言をくれた友人は

「虚無とたたかう」

「再起する青年」

というかっこいいアドベントカレンダーをやっているのでこちらも是非。

 

 では早速、第1回目は天野しゅにんた先生の『philosphia』です。

 

philosophia (百合姫コミックス)

philosophia (百合姫コミックス)

 

 

 表紙のアンニュイなシガレットキスに惹かれて買いました。内容も表紙のように、少し気だるげな空気の中、煙のようにゆらゆら捉えどころのない色気の漂う作品だと思います。

 こちらの作品で最初に好きになったのは、愛(表紙左)のキャラです。

大学1年生になったばかりの愛はその容姿から引く手数多で、合コンや飲み会の誘いを連日のように受けています。しかし本人は

『今まで19年(4月生まれ)生きてきてずっとカレシの必要性を感じたことなんかない

誰にも頼らずに生きていける自立した社会人になるために大学にきたの

…という本音を言うとうるさいから絶対誰にも言わない』(『philosophia 』P.12)

 

というスタンスなわけです。

百合漫画なのに恋愛の必要性を全く感じていないヒロイン最高じゃないですか?

早く帰ってダバコ吸って本読みたい、と思いながら雑務のように合コンをこなす愛。

 

 そんな愛が知り合ったのが知(表紙右)です。地面から5ミリ浮いてるような不安定さがあり、世間に全く関心のない知。喫煙所や喫茶店で話したりする内にお互い本好きということがわかり次第によく話すようになっていきます。

そのため作中には表紙2人の共通項であるタバコや本、コーヒーが頻繁に出てきます。いつもの喫茶店でコーヒーを頼み、タバコを燻らせながら本の話をするのが2人の距離感。

まぁ逆に言うとタバコと本とコーヒーしか共通項がないんですよこの2人。

前述のように地に足ついた自立した社会人を目指す愛と、人生諦観していて明日にでもいなくなってしまいそうな知の危なっかしさが絶妙なバランスで共存してます。

 

 知に近づきたい愛と、それを煙に巻き続け笑顔で壁を作る知。

人を好きになるのはくだらないことだと思ってた愛が、知に惹かれてるのを自認してゆっくりと肯定していく様子が丁寧に描かれているのでわかりやすく、ありがたかったです。

あと愛が自分の気持ちを伝える際に、まあまあとんでもないこと言うんですが

『客観的にどのように思われても私がそう思うならそうです』(『philosophia 』P.161)

と真顔で淡々と宣言していて思わず笑顔になりました。なにを言ったか気になる方はぜひ読んでみてくださいね。

 タバコと本とコーヒーというアイテムが好きで、ビターな雰囲気も好きならドンピシャでオススメします。