人生史上最高峰のラブレターー松浦理英子『裏ヴァージョン』
これは「百合作品」アドベントカレンダー6日目の記事です。
6日目の今日は引き続き小説です。松浦理英子先生の『裏ヴァージョン』。
私のこれまでの人生史上、『裏ヴァージョン』に勝つラブレターはないです。
※ネタバレがあります。未読の方はご注意ください。
主文は一言 二重構成
始まりは短編です。そしてその短編の最後には辛辣な一言コメントがついています。
しばらくはその作りで続いていきます。
短編の最後につけられるコメントの切れ味がえぐいです。鋭角から鋭利な刃がぐっさりきます。
少しずつ読んでいくとわかってきますが、短編を書く筆者とそれに辛辣コメントを添える読者が、『裏ヴァージョン』という一冊の本を通して長編を紡いでいく二重構成になっています。
コメントに応えて次の短編が書かれていくので、次の話が気になってどんどん先へ進みます。
友情?恋愛?言い表せない関係性
『裏ヴァージョン』で一番好きなのが、筆者と読者の関係性です。
二人の関係性を表している一文を見つけたので引用します。
人は性を介在させずに分かりあえるのか。女性が、家庭でも男でもなく同性の友人を求める切なさと、痛ましさを描いた“友情”小説
(文春文庫『裏ヴァージョン』作品紹介より)
上記では「“友情”小説」と書かれていますが、無理にカテゴライズしなくいいと思います。というか、カテゴライズできないと思います。
あれだけバチバチ言い合いながらもお互いのことあんなにも好きだってわかるラブレター、これから先もない気がします。
少し短いですが、好きすぎてあんまり話せないのでここまでにします。