「口先女と鉄壁の処女」ー四ツ原フリコ『ライカ、パブロフ、ポチハチ公』

 これは「百合作品」アドベントカレンダー3日目の記事です。

 

 はい、というわけで3日目の作品はこちら。

四ツ原フリコ先生の『ライカ、パブロフ、ポチハチ公』。

 

 

 自主制作百合マンガ誌『ガレット』を購入した際、初めて四ツ原フリコ先生の作品を拝読しました。そして笑い倒しました。これあまりにも読んでほしいので併せてご紹介しますね。

 『セックスしないと出られない百合』。

 

 

 もうタイトルからして強い。そして内容も強いです。

タイトル通りの部屋に閉じ込められた幼馴染二人が、見たいアニメの時間までにどうにか部屋を出ようと四苦八苦する話です。

閉じ込めた本人が天の声として二人に指示を出すんですが、普通にガン無視されてたり壁に落書きされたりとやられ放題なのも笑えます。

そして終盤、天の声と読者のシンクロ率200%になるくらい萌えます。

なんと100円という破格で読めますので、お試しで読んでみるといいかもです。

 

 それでは話は戻って『ライカ、パブロフ、ポチハチ公』。

こちらは上記作品があまりにもツボだったため、その後四ツ原先生の作品を買い漁った内の1冊です。

表題作を含めた6つの短編から成り立っており、今回はその中で『口先女と鉄壁の処女』について話したいと思います。こちらもタイトルが強いですね。

 

 同級生の小雪さんはまつりさんのことが大好きで、毎日「好き」「付き合って」「結婚して」と伝えます。しかし言いすぎて全く本気と捉えられず、すべて笑って受け流されています。

 

リップサービスはもうたくさん 小雪の言うこた軽すぎるんだよ」

「有難みも薄れるわ」 (『ライカ、パブロフ、ポチハチ公』P.71、72)

 

  などと言われてしまう始末。なんとか気持ちを伝えようと雑誌の特集を見て実践しては失敗を繰り返す日々を送っています。

 しかし、とある出来事をきっかけ小雪さんが本気でまつりさんのことを好きなんだとわかる瞬間が訪れます。

ここからです。そのときに使用されているセリフが天才なのでこれはぜひ読んでほしいです。今までの「好き」や「大好き」では伝わらなかったのに、これで伝わるのかーー!!!という体験ができます。萌えます。

小雪さんが手を変え品を変え「好き」伝えようとし、最終的に伝わったのがこの言葉というのが最高でした。

 

 あと蛇足ですが『恋を描く人』と『Chopsticks』も大好きです。

割り切りたい割り切れない関係ーユキムラ『傷心』

 これは「百合作品」アドベントカレンダー2日目の記事です。

 

 2日目の作品はこちら、ユキムラ先生の『傷心』。

 

傷心 (ひらり、コミックス)

傷心 (ひらり、コミックス)

 

 

 

 表紙買いです。距離感から明らかにわかるのに一切交ざらない視線と浮かない表情、唯一触れ合っているのが指先のみ。そして『傷心』というタイトル。雰囲気ありまくりですよね。買いです。

 

 『傷心』は番外編を含めた8つの短編からできています。

みんなそれぞれ好きなので全部語りたいほどですが、今回はその中で表題作『傷心』二人の話をします。ほんとは全部話したいんですけど。特に『Armet』を。でも今回は『傷心』二人に絞ります。

 ※好きなところを語るにあたり、物語の核心部に触れてるかもしれません。ネタバレ苦手な人はご注意ください。

 

「ねぇ 私とどう? そんな風に声を掛けた」

 

「ーー遊びでいいなら」

 

「うれしい」 (『傷心』P.3)

 

 こんな会話から物語は始まります。

振られて寂しかったのでサクッと遊びで体の関係。

そこから2年経った今でも二人の関係は変わらず、遊びのままーー?

というのがざっくり大筋です。

社会人セフレ百合です。希少です。ありがとうございます。

 

 2年の間にとっくに麻矢さん(表紙左)はエリさん(表紙右)に惚れていますが、

面倒くさい女と思われるのがイヤでひた隠しにしています。

一方エリさんはとある過去からもう恋愛で傷つきたくないと、自分の気持ちに蓋をしています。

そしてお互いに自分のことを面倒くさい女だと思って踏み出さないんですよ。

クッキーつまむようにサックリ体の関係は結んで2年も継続しているのに、そんな二人だからこそ距離感を測り測って2年も不動。いいですね。

大人だから、と関係を割り切っているように見せて全然割り切れておらず、でも自分から踏み出す決心もつかず、

「いつまで遊んでくれるのかしらねぇ…?」  (『傷心』P.8)

と一人ごちるところが不器用で愛おしいなって思います。

 

 ようやくお互いの気持ちを伝える段になっても、恐る恐る

「今更…こんな事… 伝えるのが怖くて…」 (『傷心』P.16)

 などと不器用さ全開で、あんまりかわいいので机に頭を強打しながら読み進めるハメになります。

 

 あと二人の関係を象徴するのにタトゥーが使われており、このタトゥーかなりいい味出しています。これまでと、これからの象徴としてのタトゥー。

この二人がどんなきっかけでどう行動するのか、気になった方はぜひ読んでみてくださいね。

 また、巻末に二人のその後を描いた番外編『告白』がありますので、『傷心』との変化を思う存分楽しんでほしいです。思わず本閉じて「かわいいな!!?」と叫びたくなるはずです。

 

 

煙に巻きたい人と巻かれたくない人ー天野しゅにんた『philosphia』

 これは「百合作品」アドベントカレンダー1日目の記事です。

 

 「まあさんに百合漫画アドベントカレンダーやってほしい」

という友人の一言を受け、おもしろそうなのでやることにしました。

今日から25日まで毎日1つ好きな百合作品を紹介していきます。

漫画縛りは後々しんどくなってきそうなので作品に変更。

紹介というか、好きなところを好き勝手書いていきます。

10日後の25日まで10本書く予定です。

 

 なお、その言をくれた友人は

「虚無とたたかう」

「再起する青年」

というかっこいいアドベントカレンダーをやっているのでこちらも是非。

 

 では早速、第1回目は天野しゅにんた先生の『philosphia』です。

 

philosophia (百合姫コミックス)

philosophia (百合姫コミックス)

 

 

 表紙のアンニュイなシガレットキスに惹かれて買いました。内容も表紙のように、少し気だるげな空気の中、煙のようにゆらゆら捉えどころのない色気の漂う作品だと思います。

 こちらの作品で最初に好きになったのは、愛(表紙左)のキャラです。

大学1年生になったばかりの愛はその容姿から引く手数多で、合コンや飲み会の誘いを連日のように受けています。しかし本人は

『今まで19年(4月生まれ)生きてきてずっとカレシの必要性を感じたことなんかない

誰にも頼らずに生きていける自立した社会人になるために大学にきたの

…という本音を言うとうるさいから絶対誰にも言わない』(『philosophia 』P.12)

 

というスタンスなわけです。

百合漫画なのに恋愛の必要性を全く感じていないヒロイン最高じゃないですか?

早く帰ってダバコ吸って本読みたい、と思いながら雑務のように合コンをこなす愛。

 

 そんな愛が知り合ったのが知(表紙右)です。地面から5ミリ浮いてるような不安定さがあり、世間に全く関心のない知。喫煙所や喫茶店で話したりする内にお互い本好きということがわかり次第によく話すようになっていきます。

そのため作中には表紙2人の共通項であるタバコや本、コーヒーが頻繁に出てきます。いつもの喫茶店でコーヒーを頼み、タバコを燻らせながら本の話をするのが2人の距離感。

まぁ逆に言うとタバコと本とコーヒーしか共通項がないんですよこの2人。

前述のように地に足ついた自立した社会人を目指す愛と、人生諦観していて明日にでもいなくなってしまいそうな知の危なっかしさが絶妙なバランスで共存してます。

 

 知に近づきたい愛と、それを煙に巻き続け笑顔で壁を作る知。

人を好きになるのはくだらないことだと思ってた愛が、知に惹かれてるのを自認してゆっくりと肯定していく様子が丁寧に描かれているのでわかりやすく、ありがたかったです。

あと愛が自分の気持ちを伝える際に、まあまあとんでもないこと言うんですが

『客観的にどのように思われても私がそう思うならそうです』(『philosophia 』P.161)

と真顔で淡々と宣言していて思わず笑顔になりました。なにを言ったか気になる方はぜひ読んでみてくださいね。

 タバコと本とコーヒーというアイテムが好きで、ビターな雰囲気も好きならドンピシャでオススメします。

 

突然ですが、夏が苦手です。

 

高彩度高露出で思わず目を細めてしまう画面と

自分と外の温度が似ていて輪郭が常にぼやけている感じがどうにも慣れません。

 

しかしもう何十回と過ごしている上これからも過ごすので、

いい加減快適に過ごせる方法はないものかと模索してます。

試しに友人に聞いてみたところ、

・青森へ行く

・北海道へ行く

・パリへ行く…etc

と、もはや物理的に北へ移動してました。

フットワーク軽いわ。たくましい。そゆとこ好きです。

 

最近は自分でもいくつか見つけましたよ。

まずですね、もう思いっきり走ります。夜に。

少しベタつくを通り越して滝のように汗をかき、そのままシャワーに直行します。

そしてさっぱりしたところでエアコンを効かせた部屋に入りアイスを食べる!!

夏!最高!! 

となるのは今のとここれです。スイカでもいいですね。

 

正直いまのところこれしか見つかっていないので、夏を快適に過ごせる方法ご存じの方いたらぜひ教えてください。

『やがて君になる』のこと考えすぎて日常に支障 2

 

 自分でも信じられないほどの熱量で、

私もうこの物語に恋してるんじゃないかと思います。 

 

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わたしに好きは、訪れない
新生徒会の役員となった侑は燈子からの想いを受けつつも、いまだに自分の中に特別な感情が芽生えないことを苦く感じていた。「わたしも、七海先輩のことを好きになりたい」。そう感じる侑だったが――。_amazon内容紹介より

 


恋愛感情や特別といった気持ちがわからない主人公、小糸侑。

そんな侑と同じ感覚を持つ"はず"だった七海燈子。

1巻最終話で、燈子先輩がなぜ侑のことを好きになったがが明かされました。2巻ではその2人の関係性がさらに変化していきます。

 

仕草が語る表情

 2巻はキャラクターの仕草が如実に心情を表しているように感じました。1巻の物と人の距離を心理的距離感に置き換えるだけでも分かりやすいしうまい表現だな~、と思っていたらさらに奥がありました。天才?


 例えば次のシーンです。
放課後、生徒会活動が終わりみんなが帰路につこうとしています。
そんな中燈子先輩はパソコンでやり残したことがあるからと一人居残りすることを
メンバーに告げ、そして次のコマ。

 

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見ました?燈子先輩の手。

何を言ったわけでもないですが、燈子先輩のなにか言いたそうな表情と少し心細そうに机の下に入れて指先をそっと合わせている手。侑も一緒に残ってほしいけど、そんなこと言えないけど残ってほしい全力アピールか わ い す ぎ。
訴えかけている顔とは裏腹に手が不安そうなのがですね、もうね、尊い(語彙の消失)。そんな燈子先輩の様子を読み取って用もないのに残ってあげる侑は、やっぱり優しいです。

 

 さらに次のシーン。次は気づいた中でもエベレスト萌えです。極寒のエベレストに桜が咲きました。問答の末、燈子先輩の「キスしたい」を渋々受け入れることにした侑。

 

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はい。桜がね、咲き乱れてちょっと画面が見えづらくなってしまったかと思いますけどもね、続けます。

渋々受け入れたとはいっても不意打ちではなく、侑にとって初めて自分で受け入れることを了承したキスです。その緊張感が燈子先輩の服をギュッと握った手と不自然に浮いたかかとから伝わってきてですね、もうね、尊い(語彙の消失再び)。
椅子に座ったまま足に力入るとつま先よりもかかとが浮くんですよね。燈子先輩の服の皺濃いし飄々としてるように見える侑の緊張感がものすごい伝わってきてもう、は~、ありがとうございます(?)。欲を言うならばキス後の侑の表情が見たかったです。


「好き」と「特別」

 2巻は新キャラが出てきたり1巻のキャラがより掘り下げられたりしていきますが、そんなキャラの一人。槙くん。
 槙くんをざっくり紹介するならば「傍観者」です。

彼は自分が舞台に上がることを嫌います。あくまでも観客として物語を傍観する立場にいたい人です。さながら百合男子。


 侑と燈子先輩のキスを偶然目撃した槙くんは2人の物語に当然興味を持ちます。
そしていきなり侑に「昨日(のキス)見ちゃったんだ ごめん」とゆさぶりをかけます。「傍観者」でいたいと思ってる割には随分と不用意に物語に突っ込んでいきます彼。コナンくんかよ。だから今まで巻き込まれてきたんじゃないんかなぁ、と思ったのですが次の侑のリアクション見て槙くんのこと頭から吹き飛びました。

 

 侑「七海先輩には言わないで 見ちゃったってこと」

 槙「(略)...どうして?」

 侑「余計なこと言って怖い思いさせたくない」


 ここでとっさに燈子先輩の心配をするんですよ、侑。


自分とのキスが周りに知られることによって敬遠され孤立する燈子先輩。そんな想像をして背筋に悪寒が走る侑。ここまで自分のことは一切なし。自分の心配より、燈子先輩。しかも自分でその様子に気づいてないようです。

読者このシーン完全に槙くんとシンクロ率200%ですよ。「最初にする心配がそれなんだ おもしろい」。槙くんはそんな侑の様子をみて言います。

 

 「小糸さんも"ちゃんと"七海先輩のこと好きなんだ」

 

"ちゃんと"。はい出ました地雷ワード"ちゃんと好き"。"ちゃんと好き"ってなんなんでしょう。"ちゃんと"してない好きはなに?

さりげなく使われてますが、このセリフ読んだとき指のささくれが第一関節あたりまでビーッと切れずに引っ張られたような気持ちになりました。

例に漏れず侑もこの言葉に引っかかってますが、うまく否定する言葉が見つからず槙くんからは照れ隠しだと思われてその場は終わります。槙くんちゃうねん。そうじゃないねん。ちゃうねん。

 

 場所は変わって侑の家。燈子先輩がくれたプラネタリウムを抱くようにして横になりながら侑は思います「心臓が選んでくれたら」。

 

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このセリフは侑の家に来たとき燈子先輩が言った「いま心臓すっごいどきどきしてる」というセリフを受けて、自分もどきどきしたりすれば「好き」や「特別」がわかるのに、という意味です(多分)。

 「心臓が選んでくれたらいいのに」のコマ1つ前には燈子先輩の後ろ姿が浮かび上がってます。はい、ちょっと待ってくださいね。ここでもう侑は無意識に燈子先輩を選びたいと思ってるんですよ。あれ?侑は誰のことも「特別」と思えないはずなのに、特定の1人をここで思い浮かべていますね?これってもう燈子先輩は侑の「特別」なんじゃないんですかね。

 

 別のシーンで侑が燈子先輩の心配したのは自分がお人好しだからであって、燈子先輩じゃなくてもそうした。と、自分の気持ちを否定するくだりがあります。

 ここがミソです。要注意です。

侑は恐らくまだよくわかってないと思いますが、「好き」という感覚を持ち得ない人は少女漫画にありがちな画面いっぱいに星が飛び散ってドキがムネムネするような感覚がないのでこれは「好き」じゃない違うって否定しがちなんですよ。侑もまずこれだと思って大丈夫です(勝手に)。

ちなみに燈子先輩が侑の家へ来たときに聞いた「人を好きになると そんなふうになっちゃうんですか」に先輩が「そうだよ... いま心臓すっごいどきどきしてる」と返したのも、どきどきしないからこれは「好き」じゃないと思い込む一因になってます。では実際に「好き」なのかと言われると微妙なところで、それは下記で記載します。

 

 前置きが長すぎたというか前置きが本編みたいなとこありますが、ここから「好き」と「特別」の違いが重要になります。胸の高揚を伴う「好き」という感覚を持てない人でも、人を「特別」と思うことはできるんですよ。その人のことを大切に思い一緒にいたいと思う気持ち。侑はこの時点で「特別」を燈子先輩に抱き始めているんじゃないでしょうか。

 「好き」と「特別」の違い、これから先もっと詳細に書いてくれるんですかね。どうでしょう。むしろこの方向に進むのかもわからないので微妙ですし、感覚は人によって様々なので上記はあくまで個人的な見解なんですけどね。

 

 10話と十話

 2巻最大の山場、10話と十話。

交通事故で亡くなった姉の代わりを演じることで、姉の不在を認めまいとする燈子先輩。先輩が固執する劇は、彼女の姉が7年前に行うはずのものでした。その事実を知った侑は、燈子先輩に劇をやめるよう打診します。

 侑は燈子先輩のことが心配でした。無理をしているんじゃないかって。そのままの燈子先輩でも好きな人はいる。現に私は飾らないあなたを知っていて、そんなあなたを好きになりたい。そう思った侑が先輩に一歩踏み込んだ瞬間、先輩は取りつくしまもなく拒絶します。そして侑がついてこなくても劇はやると宣言します。

 今まで「優しい」とか「好き」と言われて慕われていた侑は、燈子先輩は自分を拒絶しないと思い込んでいました。しかし燈子先輩は自分から離れていく可能性もあるということに気づきます。

 

 ここで侑は葛藤します。

燈子先輩が離れていくのはいやだ。燈子先輩を好きになりたい。「(「好き」を知らない私を好きになって一緒にいてくれる燈子)先輩と一緒にいられないなら わたしに誰が好きになれるの」いや、なれない(反語)。なんだかんだ侑も寂しくて、一緒にいられる時間を捨てたくはない。長年ずっと願ってきた「好き」や「特別」を知りたい気持ちと燈子先輩と一緒にいたい気持ちを比べて、後者が勝った。これはもう、燈子先輩は侑の「特別」以外の何物でもないんじゃないですかね。侑が気づいてないだけで。残酷な話。

 

 10話と十話で関係性がぐるんぐるん変わるので思考回路がショート寸前。つらい。これつっらいですね。少女漫画によく書いてあるような「好き」を持てないと認めるには相当長い時間と覚悟がいるんですけど、その過程全部すっ飛ばして封じ込めましたからね、侑。

 ここまで来て帯の「わたしに好きは、訪れない。」が180度違った意味を持ち始めます。侑が自分の状況を観察して言っている言葉かと思いきや、自分に言い聞かせるための言葉でした。侑に「好き」が訪れたら、先輩とは一緒にいられなくなるからです。あ~え~~~これ3巻どうなるの。どこに着地するのかまっったく読めないです。あ゛ー続き気になる。あと10話と十話の侑と燈子先輩の立ち位置や空気感、セリフもなにもかもが素晴らしいのでぜひ原作読んでみてください。

 

気づいた小ネタシリーズ

・物語の転換期は電車が走っている(1巻はキス、2巻は拒絶)
・なに言いかけた?侑なにいいかけたの??"す"???
・背景に何気なく書かれた短歌が後半の川べりシーンの伏線?こういう細かい伏線大好き。

P.72「梓弓 引けど引かねど 昔より 心は君に 寄りにしものを」

歌意:あなたが私の心を引こうが引くまいが、昔から私の心はあなたに寄り添って離れないでいたのに

P.73「わが身は今ぞ 消えはてぬる」

歌意:離れ去ってしまう人を引き止めることができなくて私は今、消え果ててしまう

 

 

個人的な所見と希望 2

 好きつらい好き。1巻の感想(http://maayada.hatenablog.com/)で侑が燈子先輩からの好意に罪悪感を持ち始めたら読むのしんどくなるなぁ、と書きましたが前半で一通り萌え尽くしたあと後半の展開読んでそっと横になりました。侑はまだ「好き」という気持ちを持つこと諦めてない。この点すっかり抜けてましたね。

 十話で燈子先輩が意識的に「好き」という言葉を束縛に使ってるの知って、まぁそうだろうとは思ってましたがほんっっと「ずるい」ですね。自分がその言葉から逃れられず演じることをやめないのに、まったく同じ呪いを侑にかけました。七海燈子~~~~!!ずるい女~~~!!でも侑に対して右往左往する様がかわいくて憎めない~~ずるいーーー!!!

 そしてやっぱりパワーバランスは圧倒的に燈子先輩に傾いたままです。片思いって、思われてるほうが相手のことを好きになるか拒否するか、選択肢があると思うんですよ。

でも侑にはこの選択肢がない。受け入れる、という選択肢しかない。燈子先輩と一緒にいたいと自覚したからには、もう受け入れるしかないんです。人形のように。燈子先輩は侑を断ち切れることを示しました。侑にはそれができなかったんです。書いてるうちに侑のほうが燈子先輩に依存してる気がしてきました。まあ、圧倒的に立場が弱いのは侑です。「好き」を持ち得ない人の「特別」になりそうな枠はなによりも強いです。絶対に手放したくない。

 えー、3巻ほんとどうなるんですかもう待てないです。佐伯先輩は燈子先輩に踏み込んで来なさそうなのがわかったので、こよみちゃん。こよみちゃんは小説書いてたりで人を客観的に見るのに長けていそうなので、侑と燈子先輩のこと気づいて侑になにか言ってほしいです。なにかってなんだろう。なんだろう??わからない!でも今のままつらい~。

はー、とまぁこんな感じで2巻出たばっかりですけど明日にでも3巻読みたいです。

 

みなさんも気になったら書店へレッツゴー!!Kindleで買えば今すぐにでも読めますよ!!

『やがて君になる』のこと考えすぎて日常に支障

おかしい。

この漫画は既刊2巻のはずなのになぜかうちに2桁ある。

 

好きを知らない少女が出会う、一筋縄ではいかない――女の子同士の恋愛
恋する気持ちがわからず悩みを抱え侑は、先輩・燈子が告白を受ける場面に出会う。誰からの告白にも心を動かされないという燈子に共感を覚える侑だが、やがて燈子から思わぬ言葉を告げられる。「君のことが好き」_amazon商品紹介より 

恋愛感情や特別といった気持ちがわからない主人公、小糸侑。

そんな侑と同じ感覚を持つ"はず"だった七海燈子。

この2人を軸にして物語は展開していきます。

 

「特別」のはじまり

 物語序盤で侑は中学校の同級生から告白されてますが、「特別」という気持ちがわからないため1か月間返事ができず悩んでいます。ひょんなことから燈子先輩も同じような感覚を持っていると知った侑は、先輩に相談。同じ感覚を共有できる人として侑は恐らく初めて、恋愛感情や特別という気持ちがよくわからないといった悩みを打ち明けます。そして無事同級生への告白の返事が済んだと思った次の瞬間、燈子先輩から告げられた言葉。

 

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 「だって私 君のこと好きになりそう」

 

このときの読者の心情を侑が代弁してくれてます。

 「この人が何を言っているのか わからない」

 

 うん、私もまったくわかりません。一語一語、単語で区切って意味を咀嚼してみてもやっぱりわかりませんでした。突然なんぞ。侑からすると「やっと出会えた同じ気持ちを共有できる人」がよりにもよって自分のことを好きになってしまったという状況。

 なぜ燈子先輩が侑のことを好きになったかは後半で明らかになりますが、ここでは燈子先輩は話をはぐらかし侑は事態がよく呑み込めないままその場を離れることになります。

 

2人の距離感

「特別」を意識し始めた燈子先輩と侑の距離感が素晴らしかわいいです。

眉目秀麗、成績優秀でクールな印象の燈子先輩が「好き」という初めての気持ちに振り回されて右往左往する様が大変かわいらしい。
かわいらしいというか「あ゛ーかわいいなぁもうーー!!なんなのもうーー!!!」といった具合で両目を押さえて天を仰ぐかわいさ。

侑が飲んだジュースに関節キスを意識して一人こっそり頬を染める燈子先輩とか、
どう考えても苦しい言い訳つけて休日に侑に会いに来る燈子先輩とか。
そしてそんな燈子先輩を受け流しまくる侑。
受け流してる自覚も恐らくないであろう侑。
ナチュラルにキラーパス出してきて確実に燈子先輩を萌え殺しにかかっているのにまったく自覚なし。なんなんだ。かわいい×かわいい=めっちゃかわいいじゃないですか。なんなんだ(2回目)。

 

「ずるい」の意味

 さらにこの漫画はディープインパクトばりの萌えだけでは終わらず、登場人物の内面を丁寧に追っていきます。

 最初は半信半疑だった侑も数々のアプローチを受けて燈子先輩の好きという気持ちに確信を持ち始めます。さらに燈子先輩の気持ちを確かめるべく、人から見えないところでそっと手をつなぐ侑。まぁ大胆。そんな侑の突然の行動に思いっきり頬を染めて俯く燈子先輩。そして燈子先輩の様子をこっそり窺っていた侑のリアクションがこちらです。

 

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 予 想 外。よくある恋愛漫画なら「えっ!?もしかして〇〇くんも私のことを...!(飛び散る星」といった感じの気持ちが働きますが、かたや侑。侑が燈子先輩へ感じたのは「ずるい」という気持ち。同じだと思っていた燈子先輩がすでに「特別」を知っていた。自分より先に「特別」を知った燈子先輩は「ずるい」んです。

 この「ずるい」の感情はいろんな方が言及していた燈子先輩に対しての「嫉妬」や「悔しさ」「羨望」もそうなのですが、私は「寂しさ」と「不安」が侑の中で一番強かったんじゃないかなと思います。友達にも相談できず、ずっと一人で抱え込んでいた悩みをようやくわかってくれる人ができた。自分と同じだと思っていたのに、一緒だと思っていたのに。先輩は「特別」を知って変わってしまった。また私一人だけ取り残された。そういった気持ちが、先述の気持ちとごっちゃになって出てきたのが「ずるい」という言葉と表情。すんごいなこの漫画。

 

 ちなみに侑の「寂しい」気持ちが、後半の燈子先輩からの申し出を受けるきっかけにもなっているんじゃないかと推測してます。手の届かないところに行ってしまった先輩は、しかし侑のそばにいることを望んでいます。かつては自分と同じ場所にいた先輩が引っ張りあげてくれるなら、もしかしたら自分も変われるかもしれないという思いもあったかもしれません。それと「特別」がわからず悩んでいる侑だからこそ、やっと「特別」がわかった燈子先輩からその気持ちを奪うことができないんだと思います。燈子先輩はそれをわかっていながら利用している節があります。だから「ずるい」。

 

「特別」を知りたい侑と「特別」になりたくない燈子先輩

 侑を「特別」と思う燈子先輩は、しかし人の「特別」にはなりたくないと言います。人を「特別」と思えない侑だからこそ好きになったと。かたや侑は、自分のことを「特別」と思ってくれている燈子先輩のようになりたいと願っています。

 ここに『やがて君になる』最大の難関があります。

 「特別」を持ち得ないからこそ侑を好きになった燈子先輩は、侑が「特別」を知ったとき好きなままでいられるのでしょうか。燈子先輩の恋は実った瞬間に終りを迎えるのでは?

 え、なにこれつらい。この難関部どうなるんでしょうね。まっったくわかりません読めません。ようやく「特別」を知った燈子先輩を応援したい気持ちもありますが、侑に「特別」を知ってもらいたい気持ちもあります。こちらを立てればあちらが立たずです。難関部がこれから先どう展開しどこへ着地するのかほんとうに楽しみです。

 

個人的な所見と希望

 1巻通して何度か言われていますが、燈子先輩は「ずるい」です。彼女は意識的に侑との距離を調整し、付かず離れずのアプローチをしてきます。もちろんそれは好意から来ているためされている方はイヤな気はしません。しかし気持ちに大きな差があり、好意を受ける一方のほうはただ何も考えず受け取っているわけではありません。漫画の中でも燈子先輩に眩しい表情を向ける侑の描写がいくつか出てくるように、少しずつ、少しずつ受け取った気持ちが積み重なり重みが増してくるはずです。そして侑は優しい子です。もらってばかりの気持ちにいつか堪えきれずつぶされてしまいそうで心配です(母親面)。

 今はまだ燈子先輩が侑の気持ちを一応は尊重しているように見えますが、すでにパワーバランスは圧倒的に燈子先輩に傾いています。もう違うところへ行ってしまったとはいえやっと見つけた唯一の理解者を侑は絶対に手放したくないはずですから。

 ちなみにこれはほんとうにどうでもいい話ですが、侑が燈子先輩からの気持ちに罪悪感を持ち始めたら個人的に読むのがしんどくなるなぁ、と思っています。好意は時に悪意よりも重い。

 いろいろ気付いた佐伯先輩が燈子先輩を止めに入ってくれる展開だったらおもしろいかも。かも。佐伯先輩とこよみも好きだからもっと物語に絡んできてくれないかな~。等など考えて、気が付いたら1日終わってます。もうほんとにコマ1つ取っても人と物との距離感や空白の使い方が上手すぎて語りつくせません。

 みなさん『やがて君になる』1巻、気になったらぜひお手に取ってみてください。